2009年6月16日 (火)

2009年06月 石井優美子添削

原 句 マロニエの花や流るるモーツァルト  丹波えり子
添削例 マロニエの花に聞こえてモーツァルト

●対象がいまひとつ見えてこないようです。モーツァルトの優雅な調べが聞こえるように、花に聞こえているように託して、優雅さを表現しています。

原 句 薫風や遠征のバス見送つて  高木美貴子
添削例 風薫る遠征のバス見送つて

●“や”で切ってしまったのが惜しいです。切れ字はそこでいったん句のリズムが終ります。ここはやはり遠征のバスを見送る、薫風であってほしいと思い、添削例としました。

原 句 陶仏の思ひ思ひの薄暑かな  池谷瞬草
添削例 陶仏の何に傾げる薄暑かな

●たくさんの陶仏が置かれたいたのが、実際の光景かもしれませんが、季語と情景が少し離れて見えています。一体の陶仏に絞ることで、季語が伝えようとすることも、返って見えてきます。

原 句 髪束ね白きうなじに薄暑かな  宮崎しずえ
添削例 夏来たる項の白き束ね髪

●女の人の艶っぽさを感じる一句ですが、季語が少し違う気がしました。明るめの季語を用いることで、束ね髪の項がどういうもであるかを想像させています。

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2009年6月15日 (月)

2009年6月高尾早弓添削

原 句 ドバイより無事の便り五月晴れ 須江真由美
添削例 ドバイより無事との便り五月晴れ

○真由美さん、摩天楼が象徴的なドバイも、今不況で大変なようですね。さぞ心配なさったことでしょう。「五月晴れ」にほっとした気持がよく表れています。字足らずですので、補いました。

原 句 薔薇の芯夜のすきまにさしだしぬ 松岡千代
添削例 薔薇の芯夜のしじまに開き初む

○千代さん、薔薇のまだかたい蕾が夜のなかに佇む様子は叙情的で雰囲気があります。「すきま」が少しわかりにくいように感じましたので、見えやすい表現に変えてみました。
原 句 銀座には風鈴売りが立ちにけり 八重樫雅子
添削例 風鈴売り銀座に風を呼びにけり
○雅子さん、都会のまんなかの銀座に、江戸情緒あふれる風鈴を売っているのを詠んだのは、よい素材を見つけました。報告になっているのが惜しいので、少しふくらませました。
原 句 ブラウスの綻びありし薄暑光 金野美月
添削例 ブラウスに綻びありし薄暑光
○美月さん、夏の初めの微妙な淡い感覚を詠んで成功しています。「に」で余韻をもたせて句の世界を広げてみましょう。

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2009年6月 松下美奈子添削

原 句 嫁ぐ日に薔薇のアーチを潜りをり 松本広子
添削例 嫁ぐ日の薔薇のアーチをくぐりけり
原 句 夏めくや鯉の背びれの光りをり 亀田紀子
添削例 夏めくや背びれ尾びれの光る鯉
原 句 洋館のけぶれる小道藤の雨 萩原満智
添削例 洋館のけぶつてゐたる藤の雨
原 句 エコバッグ膝に広げて街薄暑 秋山よし美
添削例 エコバック肩に重たき街薄暑

■広子さん、嫁ぐ日にくぐる薔薇のアーチは、格別なことでしょう。助詞を一文字入れ替えるだけで、その特別な心情により迫ることができます。■紀子さん、鯉が翻った瞬間の光を巧く捉えました。せっかくですから、鯉の勢いに焦点を絞ってみましょう。■満智さん、「藤の雨」という表現は、とても風情があります。雨にけぶる艶やかな洋館に焦点を当てるためには、「小道」は省いてゆったりと詠む方が良いでしょう。■よし美さん、「エコバック」と「街薄暑」の取り合わせは新鮮です。膝に広げる景が今ひとつ釈然としないので、肩にかかる重みに託して、心象風景を表現してみてはいかがでしょう。

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2009年6月 菅野奈都子選

原 句 白日傘舞妓の化粧水求め 北村英子
添削例 日傘して選ぶ舞妓の化粧水
●視点・季語が良いです。五・九・三のリズムですとやや窮屈になる
ので七・七・五でリズムを整え、下五を「化粧水」と体言止めにすると、
余韻余情が生まれます。
原 句 酢加減の母の忌なりて梅雨晴れ間  前田隆子
添削例 母の忌の雨上がりけり夏料理
●酢加減をしながら料理上手だったお母様を偲ばれているのでしょう。
上五中七のつながりに少し無理があるので、雨上がりの「夏料理」と
することで、料理の美味しさとお母様への思いを表現しました。
原 句 丸の内背広片手に薄暑かな 中村和日子
添削例 薄暑かな背広片手に丸の内
●視点が面白いですね。「かな」は下五に用いることが多いですが、
「丸の内」を最後に持ってきた方が、地名や「薄暑」の感慨、景が
生きるのではと思い、添削例としました。
原 句 土曜日や人の恋しき蕗の雨 落合文枝
添削例 土曜日の人恋しさや蕗の雨
●人恋しさの源は「土曜日」の感慨で、それが「蕗の雨」によって募っ
たのだと思います。「や」で切ると更に情感と広がりが生まれます。

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2009年6月 堤亜由美添削

原 句 風薫るミニSLの走りだす 田中あき子
添削例 薫風にミニSLの走りだす
原 句 玄関の塵ひとつ無き夕薄暑 松田美穂
添削例 夕顔や玄関に塵ひとつなき
原 句 若夏や男の肩の斜めがけ みやぎ深雪
添削例 若夏や赤き鞄を斜め掛け
原 句 雨音を持て余したる五月かな 深澤寛子
添削例 雨音を持て余したる夕薄暑
☆あき子さん、句の中に動詞はひとつにするよう心がけましょう。同じ季語でも別の傍題を探してみて。☆美穂さん、「夕薄暑」の空気感が今ひとつぴんと来なかった。花の季語などをあわせると余韻が出て広がりのある句になるのではないか。☆深雪さん、この句も、原句は季語が動く。素材を少し変えてスパイスのあるものを持って来てはどうか。☆寛子さん、季語「五月」が効いていず句がぼやけてしまっている。どういう状況だったのか、その時の心の動きなどを語ってくれる季語をもう少し探してみて。

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2009年6月14日 (日)

2009年6月 降矢とも子添削

原 句 システム手帳ぎつしりうまる薄暑かな 小出さつき
添削例 麦の秋システム手帳ふくらみぬ
原 句 全快の便りに遊ぶ薄暑かな 田川 緑
添削例 全快の報に五月の風わたる
原 句 除草する姐さんかぶりの二世かな 岩田薫
添削例 二代目の姐さんかぶり草むしる
原 句 花みかんおでこにキスをされたこと 堀田房子
添削例 花みかんおでこにキスをされしこと

■手帳にスケジュールがどんどん埋まっていくのは、何となく心が急くものである。ようやく寒さから抜けて、気持ちよい気候を楽しみたいというのに、もう暑くなるのかという薄暑の気分とはよく合うかも。ただ、システム手帳としたからには、その「厚み」を持ち出さなければ面白さが伝わらないだろう。■二句目、心配していた人が全快したという喜び。まさに心は五月晴れだろう。ただ、「便りに遊ぶ」というのが分かりにくかった。■三句目。二世は、異邦人の二世か、日系二世の里帰りか、Jr.の意か。いずれにしても、ちょっと古風な「姐さんかぶり」に、一生懸命草取りをしている様子が感じられるのだが、二世の意味を捉え損ねた。また「除草する」が説明的にも感じる。■花みかんの甘酸っぱい香りと、おでこのキス。これぞ、青春といいたくなるようなシーン。「された」と口語にすると、ややきつい感じがする。(降矢とも子)

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2009年5月16日 (土)

2005年5月 石井優美子添削

原 句 春嵐嵐山までついてくる   北村英子
添削例 春風の嵐山までついてくる

●「春嵐」はとてもつよい風なので、古都ゆかりの嵐山とイメージがひとつ結びつきにくいです。うららかな嵐山が味わえるよう、季語を変えて添削例としました。

原 句 黒板にらくがき残しチューリップ  松本広子
添削例 黒板に残るらくがき春惜しむ

●語調がしっくりこないので、語順を変えました。また、季語から想像する景がいまひとつ見えてこないので季語を変えましたが、もっと良い季語があるように思います。

原 句 春潮や島へとつづく長き橋   高木美貴子
添削例 夏近し島へとつづく長き橋

●“潮”と“島”など多少つきすぎのように感じました。季語を変えることにより、より橋のある光景が鮮明に見えてきます。

原 句 しづかなる宇宙に放つ石鹸玉  小泉由佳子
添削例 石鹸玉放ち虚空のしづかなる

●“宇宙”と季語からみえてくる景がこちらもはっきりしないのと、句の中心が見えにくいです。語順を整理し、季語にスポットライトがあたるように、添削例としました。

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2009年5月15日 (金)

2009年5月 堤亜由美添削

原 句 風吹けば影揺らめきぬ花篝 大貫妙子
添削例 一人言つとも花篝揺らめきて
原 句 回廊の列に加はる落花かな 堀田房子
添削例 落花して物見の列に加はりぬ
原 句 飛石を伝つて渡る春の川 山中悠嘉
添削例 飛石を渡れば春の音のして
原 句 散ることの決められてゐる桜かな 坂ゆかり
添削例 散り際の花に極みのありにけり
☆妙子さん、風が吹けば影がゆらめく、というだけでは当たり前の景。どんな小さな発見でもいいので詩情を盛り込んで欲しい。添削例は花篝の揺らめきがひとり言のように感じたというもの。☆房子さん、目の付け所はとてもいいが「回廊」が分かりにくいのでその言葉にとらわれず推敲してみてはどうか。もし「回廊」にこだわりたいなら、どこの回廊なのかもう少し情報を入れてみては。☆悠嘉さん、季語が弱い。飛石を渡った時の発見を別の言葉で表現してみて。☆ゆかりさん、「決められてゐる」桜の運命をもう少し詩的な言い回しに工夫してみて。

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2009年5月高尾早弓添削

残業を終へて残花に労はれ 清水美穂
残業を終へアカシアの花明り
○美穂さん、仕事疲れの帰り道に、余花にほっとしている気持ちを詠んだところはよいですが、「残」の字が重なっているのが気になりました。
故里へ近づく電車山ざくら 落合文枝
故里へ向かふ列車や山桜
○文枝さん、山ざくらに、故郷に近づいたことを感じ、待ち遠しく思う気持ちがよく出ています。「近づく」が説明的な感じがしました。
のどけしや三線の音の風にのり 岩田 薫
夏兆す三線の音の風にのり
○薫さん、独特の音色に耳を傾けているのが分ります。ただ、どちらかというとゆるやかな音ではなく、力強い音ではないかと思います。
たんぽゝや革命戦士と刻む墓 磯崎憲子
たんぽぽや革命戦士といふ墓碑に
○憲子さん、たんぽぽの愛らしさに、亡き人を悼む気持ちがつのります。「刻む」は言わない方がすっきりします。

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2009年5月 松下美奈子添削

原 句 寄り添はす夫婦茶碗や花の昼
添削例 行く春の夫婦茶碗を寄り添はす
原 句 囀りやホームレス歌人称へたり
添削例 囀りの路上に暮らす歌人かな
原 句 春の夜の妻の座置いて出掛けをり
添削例 妻の座を置き去りにして春の宵
原 句 ふたり食む鮭のおむすび春惜しむ
添削例 塩むすび二人で食べて春惜しむ

■はるかさん、夫婦茶碗を改めて寄り添わせるところがこの句の眼目でしょう。季語を替えることで、より味わいが深くなるように思います。■幸代さん、ホームレスの歌人を取り上げるのは新鮮です。表現を変えることで、詩情がより豊かになるように思えます。■さつきさん、「妻の座を置いて」という視点がおもしろいですね。艶やかで秘密めいた情景を、ゆったりと詠んでみましょう。■深雪さん、視点が新鮮な句です。ただ、「二人食む」と「鮭のおむすび」に焦点が別れているので、どちらかに焦点を絞った方が春を惜しむ心持ちがより表現できると思います。

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