十月初旬、「いつか参加したい!」そう思いつづけていた「日本再発見塾」に思い切って参加して来ました。
岩手県葛巻町で開催された第一回から数えて四度目の今年は、山形県最上町での開催。この塾は、日本各地に根付いた文化や伝統、歴史に触れて、その魅力を見いだし開催地の人々も参加者も元気になろうという主旨で、黛まどか先生が呼びかけ人となって毎年様々な場所で開催されています。
シーズンズからの参加者は、私(松下美奈子)と堤亜由美さん、それから山形にお住まいの高橋美月さん。(美月さんには、ラブコールを送って参加していただきました♪)
一日目、宮城県仙台駅にまずは集合。駅ではスタッフがオレンジ色のジャンバーで出迎えてくれました。日本再発見塾の素晴らしいところは、主催者も運営スタッフも講師陣も、みなさんボランティアで関わってくださっているところ。出迎えの爽やかな笑顔の青年は、東京大学の学生さん。「タイプだわ~もう○年若かったら…」なんて不埒なことを考えているところに、東京からの参加組を乗せた新幹線が到着し、改札を抜けてくる人々の中から亜由美さんを発見!亜由美さんとは久しぶりの逢瀬なのでありまして、「あ~ママになっても亜由美ちゃんだわ~」と、感慨もひとしお…。(亜由美さんが、ヘップバーン九州支部の初代支部長であったことは皆さん、ご存知?)また、駅前に集合した大勢の参加者の中には、ヘップバーン時代から大変にお世話になっている坂口郁子さんもいらっしゃり、思いがけない再会となりました。
ま、そんなこんなで、今回の参加者を乗せて、山形県最上町へ向けて三台の専用バスが仙台駅前から出発したのであります。
仙台の賑やかな商店街を抜け、住宅地を抜け、次第にバスは山間部へ入って行きます。こけしで有名な鳴子温泉を抜け、一路最上町へ。最上町は湧き水が豊富で、おいしい水の町としても知られています。気がつけば辺り一面黄金色に実った稲穂が風に揺れています。刈田もあり、掛稲もあり、美しい実りの秋の風景に思わずうっとり。
「稲の秋里は黄金の風のなか」 亜由美
さて、二時間バスに揺られてよやく開催地、山形県最上町の赤倉温泉に到着。昔学校の講堂だったという木造の三角屋根の公民館が、開講式の場所です。
参加者全員が一同に集い、主催者であり呼びかけ人であるまどか先生から、いよいよ塾の開講が告げられました。山形から参加しているはずの美月さんを捜そうと会場を見渡していると、「あれ~葛巻町の入月さん!」「あそこには、飯舘村の菅野村長さん!」これまで、まどか先生が選者を務められた俳句大会の開催地の葛巻町や飯舘村で出会った方々も、この再発見塾に参加していらっしゃるではありませんか!ここでも互いに再会を喜び合い、さらに美月さんともようやくこの会場で巡り会ったのでした♪
遠方からそれぞれに集まった塾生は、まずは腹ごしらえ…ということで、最上地域の主婦が立ち上げた米工房の手作り「米粉パン」をご馳走になりました。お好み焼き風の「ねぎ焼き」を始め、「チーズプチパン」「クロワッサン」「メープルクロワッサン」と、種類も様々。米粉でも、こんなに多様なパンができるのか・・・と驚くとともに、その味にも感動。外はサクサク、中はもっちりとした食感と言い、噛むほどに口の中に広がる米粉独特の甘み…これはもう絶品でした。
「金秋を来て焼きたての米粉パン」 美奈子
お腹も一杯になったところで、地元の達人をパネラーに迎えてパネルディスカッションが開催されました。作家の塩野米松氏の穏やかな司会によって、次々と最上町の歴史や、文化、今の暮らしが達人から引出されます。
最上町では五メートルも掘れば、どこからでも清水(すず)が湧いて出ること、戦時中は軍馬を育てていた歴史があること、熊が頻繁に出現しマタギは年間200頭もの熊をしとめること、特産品であるアスパラガスを加工した麺が人気であること…等々。
穏やかな陸奥訛で語られる達人達の話は、どれも興味深いものばかり。島である天草では、地下水の水脈を掘り当てるのに140mも掘削しなければならないのに、5mでピュアな水が湧くなんて信じられない事だし、マタギという職業が今尚この日本に存在している事さえも知らなかった・・・。厳しい自然環境と折り合いをつけながら、独自の文化を生みだし、最上の暮らしの中に脈々と受け継がれていることに感動を覚えました。
最上町について学んだところで、いよいよフィールドワークです。参加者は「清水の道探し」というテーマのもと、七つのグループに別れて、様々な体験を通して学び合います。
私達は、まどか師範とともに、「奥の細道」で芭蕉翁が歩いた「山切伐峠(なたぎりとうげ)」で一句を詠むというグループに参加。案内人は地元の達人大場さん。八十歳を超える大場さんは、とにかくおちゃめで元気な翁でありまして、厳しい上り坂の続く山路も山形訛でおもしろおかしく説明をしながら案内してくださいます。それにつっこみを入れるまどか先生…二人の楽しい会話に参加者も笑いが絶えません。そう…誰も俳句を詠んでいるようには見えないのです。不安になったボランティアスタッフから「皆さん、俳句のこと忘れていませんか~?ちゃんと一句詠んでくださいね~」と声がかかり、一同「はっ」と顔を見合わせたりして。
「山栗の見知らぬ人に踏まれをり」 美月
「草の実や峠に探す翁の背」 亜由美
「爽やかに清水(すず)回し飲む山路かな」 美奈子
そんな、楽しくも有意義なひとときを過ごしている内に日暮れを迎え、折から降り出した秋雨の中を、転がるように宿泊場所である赤倉温泉の宿へ。
宿では、まずは名湯でも知られる宿「三之丞」の温泉でゆったりと今日の汗を流しました。裸の付き合いに、湯船の中でも楽しいおしゃべりが絶えません。
「秋燈し肩より深き湯に惑ひ」 美月
お風呂から上がったら、いよいよフィールドワークごとに大広間で夕食を交えて語り合って眠る、夜の部「大人の修学旅行」スタート~!みんなで配膳作業を協力しつつ、この土地ならではのご馳走を並べて行きます。「菊なます」「里芋の煮物」「鮎の塩焼き」などな・・・。まどか先生を交えて、今日初めて出会ったばかりの、全国からの参加者や土地の方々と最上町の料理に舌鼓を打ち、お酒を酌み交わしながら一日を楽しく振り返りました。
「しやくしやくと菊食むひとのむねのうち」 美月
「燈火親しむ湯の宿の大広間」 美奈子
一次会はお開きになったものの、話したりないメンバーは二次会場の別の小部屋へと移動~!そこでまた次々と饗される山形の美味しい日本酒を酌み交わしつつ、大盛り上がり!気がつけば知らない人たちと深夜まで大騒ぎ・・・。
「濁り酒酌む手のどこか懐かしく」 亜由美
「お開きの二度も三度も温め酒」 美奈子
寝床となった大広間に帰ってみれば、みんなもう既に夢の中・・・。亜由美ちゃんと二人、抜き足、差し足、でこっそりと布団に潜り込んで一日目終了。
「小さき句集かかへて眠る旅の秋」 美月
二日目は、朝から早起きをして亜由美さんや美月さんと近くの朝市へ~♪朝市には、土地のお母さん手作りの産物が並んでいます。「みずぼんぼの醤油漬け」「味噌のしそ巻き」「胡桃味噌」などなど・・・美月ちゃんに山形の郷土料理の話を聞きながら、皆、お土産にと、たんまり買い込みました。
朝食も、みんなで配膳から行い、昨日会ったばかりの人たちとは思えないほどのチームワークを発揮!しっかりと腹ごしらえをして、いよいよ二日目のメイン会場である三角屋根の公民館に移動。
午前の部「歌・俳句で始める新コミュニケーション」では、各フィールドワークのメンバーが一同に会して、全員参加の「歌垣」体験です。参加者にはあらかじめ「問い句・問い歌」が提示されていて、それに対する「答句・答歌」を今朝までに提出しなければなりませんでした。実は、昨夜から参加者はみんな、この「答句・答歌」に悩まされていたのであります。せっかくなので、私たちに宿題として出されていた「問い句・問い歌」をご紹介いたします!
「問い句・問い歌」
1、すすき道影をひとつに二人かな
2、露草や愛といふ字を書いてみる
3、別々に来て澄む水に落ち合へる
4、秋の夜の湯屋に集いし旅人が月に照らされ夢を語らん
5、減反のきびしさ耐えて今日も又農外作業に老の汗ふく
6、小さき手をそっと開きて放流の稚鮎見守る子らの目清き
これらの作者は、伏せられたまま、「歌垣」は始ります。まず、「問い句・問い歌」に対して、参加者から提出された俳句・短歌の中から、まどか師範と上野誠師範によってそれぞれ三句・三首ずつ選んでいただきます。
まずは、6番の「問い歌」が読み上げられ、それに続いて「答歌」が三首読み上げられます。ここで初めて、「問い歌」の作者が明らかにされ、作者が壇上へ登場します。そして「答歌」として読み上げられた三首の作者三人は、会場の中からしずしずと壇上へ。この時点では、誰がどの歌を詠んだかはまだ明らかにされません。「問い歌」の作者が、三つの「答歌」のなかから、一番好きな短歌を選びます。そこで初めて、「答歌」の作者も、名前を名乗るのです。(「問い句・答句」の場合も同じ要領で・・・)
さて、皆さんは、まどか先生の句はどの句かお分かりになりますか?実は、1番は増田明美さん、2番は土地の男性の方、3番がまどか先生、4番は最上町町長さん、5番は山切伐峠の案内人の大場さん、6番は地元の養護の先生の作品。
亜由美さんは、6番の「問い歌」への「答歌」が、見事に作者の心をゲット!それもそのはず、心に染みるとても素敵な短歌だったのです。
「疑ひの心知らざる幼子のその眼に映す水は澄みゆく」 亜由美
私は・・・と言えば、3番の「答句」に候補者として選ばれたものの、作者の心は掴めず残念な結果に。だって、男心をおちょくった一句でしたから・・・。
「気まぐれな愛かも知れず猫じやらし」 美奈子
ところが、この句が会場の爆笑を誘い、その後私はいろんな人から「猫じやらしの方ですよね~」と声を掛けられることに。その度に「俳句に興味を持っていただけました?」と、シーズンズの名詞を差し出しつつ広報活動に励んだのであります(笑)
まどか先生と上野先生の夫婦漫才のような楽しい掛け合いの中で、笑いの絶えない「平成の歌垣」はあっという間に終了しました。初めての体験でしたが、歌で思いを通い合わせることが、こんなにも心ときめくものなのかと、なんだか病み付きになりそうなひとときでした。
昼食は、河原での芋煮会!土手に座り込んで、芋煮を片手に今回の参加者の皆さんとここでも大いに語り合いました。ここで知り合ったのが、新しくシーズンズに入会してくださった岡山の須江真由美さんです♪
午後の部の「まじゃれ放談会」では、昨日の各フィールドワークの発表があり、みんなでそれぞれの「清水の道探し」を共有しました。
出会いの連続の中で、楽しく学び続けた二日間もあっという間にお別れの時間。美月さんとも別れを惜しみつつ、今後はシーズンズの活動の中で俳句での再開を誓い合って仙台行きのバスに乗り込みました。
「秋雲や名も交さずに別れたる」 亜由美
途中、バスは最上町の特産品を販売するお店に立ち寄りました。土地の人から、そこが分水嶺の近くであることを聞いた私と亜由美さんは、好奇心がムクムク・・・時間が無いというのに、秋雨の中を走りに走って分水嶺までたどり着き、二人でハイポーズ!この場所から、同じ水が袂を分けて日本海と太平洋にそれぞれの旅を始めるのか・・・そう思うと、なんだか胸が熱くなりました。
「秋澄むや分水嶺の音たてて 」 美奈子
「清水(すず)いつか海に流れて雁渡し」 亜由美
最後の最後まで最上町を満喫した私たちは、仙台駅で別れ、またそれぞれの明日へ旅立ったのでした。そう、この二日間で得た豊かな出会いを心の糧にして。
一年を振り返るこの時期にも、日本再発見塾で知り合った方々から、近況を伝える葉書や手紙が届きます。地域に息づく文化を通して、あらゆる地域の人と人とが繋がってゆく・・・それが、この塾の魅力だと、改めて感じる今日この頃です。皆さんも是非一度、体験をしてみてくださいね!